依子(2) 捜査(7)

女優の住む有明スカイシティは遠目からは平面的に広がっている開発地帯に突き刺した巨大な剣のように見えた。

しかし車でその搭に近づくに従って剣にはかなり幅がありむしろ巨大な帆を広げた船のように姿を変えていった。

エントランスを目指して車を回すうちに建物の周りには視界をさえぎるような障害物がなく広大な芝生広場に囲まれていることが分かってくると、持倉はつい顔をしかめてチェッと舌を鳴らした。

張り込みして監視するにはずいぶんやっかいな地理条件だったからだ。

女優の葬儀会場でわざわざ探偵2人組が顔見せまでしたのは彼らの捜査状況をさりげなく宣伝するためでもあった。

仮に犯人があの会場に居たとして、さらに彼らの様子を見て焦った場合、つい犯行現場に舞い戻ってしまう、
ということが多くの場合に起こりえるからだった。

張り込みしやすい場所であればそこに姿を表す関係者の洗い出しを行うだけで盗難品の場所を知る者のリスト、つまりもっとも単純な容疑者リストが出来上がるはずだった。