2012-07-01から1ヶ月間の記事一覧

依子(1)-9

下りのスロープはまるで地下迷宮への通路のように思えた。ひどくめまいがした。鏡に映った自分の姿に、依子は驚いていた。それが自分であるとは思えなかったからだ。しかし、では、自分はどういう顔をして、どういう姿だったのか?それも、今ではなんだかは…

依子(1)−8  水晶の塔

その回廊を、テントの外壁に沿ってちょうど半周ぐらいすると、依子たちは広いフロアについた。そこには数人の子連れの先客たちがいて、ざわざわとしていた。依子は少しほっとした。フロアの造りは、なるほど映画館のものにそっくりだった。かなり広くスペー…