依子(2) 捜査(9)

車の窓ガラスをコツコツと叩く音がした。

持倉が顔を上げると、シンプルな白いブラウスに、黒地に縦のストライブが入ったスーツに着替えた依子が立っている。
サングラスは外し、メタルフレームの眼鏡に変えていた。グラスには、ほのかに紫色のカラーが入っている。

どことなく"ファッション雑誌の女性記者ふうの装い"だった。

持倉が車を降りると、それを待って依子は腕時計目を落したまま駐車場の奥にあるエレベータホールに先導した。

プロダクションに所属していた付き人が依頼人の部屋の片付けを手伝いに来ることになってます。
2Fのエントランスホールで1時に待ち合わせです。
歩きながら背中を追う持倉にそう告げる。

2Fのエントランスホールは、高級ホテルのロビーを思わせた。

大型のソファとテーブルが数組置かれており、1Fのエントランスに降りる階段脇の一角にはカウンターが組み込まれている。
その清潔なカウンターの向こうには「コンシェルジュ」と名札が置かれたコーナーがあり、
背広姿の男が控えており、
持倉と目白依子が用件を伝えると、軽くうなづいてテーブルの端末を覗き込んだ。

しばらくすると顔を上げて穏やかな頬笑みを浮かべながら二人に告げた。

高間様から伝言を承っております。
待ち合わせの方は30分ほど遅れるそうです。
よろしかったら、最上階の展望ラウンジでおくつろぎ下さい、とのことでございます。
高間様のお名前で展望ラウンジにお席も用意してございます。