確率微分方程式入門(第6版)

Stochastic Differential Equations
An Introduction with Applications, 6th ed.
(Universitext)
Bernt. Oksendal, University of Oslo, Blindern, Norway


2003年7月出版 360頁 ソフトカバー ¥7,160 ISBN 3-540-04758-1

確率過程の理論に画期的な進展をもたらし、現在では確率過程の研究に広く用いられている確率解析の基礎理論と応用について解説したテキストの改訂新版である。今日、確率解析はマルチンゲールの理論の枠組で整備・拡充されて、多岐にわたる確率過程の研究に重要な手法を提供している。本書では、経済学、生物学や物理学などへの重要な応用に動機をもつモデルの記述のために、随所に例題が与えられ、確率微分方程式の基礎理論について説明されている。確率過程における伊藤の公式とマルチンゲール表現、確率微分方程式の理論と解法、拡散過程と確率微分方程式、境界値問題・最適停止・確率制御・数理ファイナンスへの応用などの問題が扱われている。本書は、確率微分方程式のスタンダードなテキストとして広く知られており、第5版は専門家以外の方々にも好評を得ている。確率微分方程式の基礎的概念の理解のために、関連問題の事例に関する基礎的な成果からスタート、理論の進展や証明に重点を置いて研究法の応用について解説された有用なテキストとしておすすめする。


確率微分方程式の祖「伊藤清」先生について
2000年2月23日
ウォール街で一番有名な日本人は「伊藤清」教授でそうで、
デリバティブ理論で必ず伊藤のレンマが出てくるかららしいです。
にも関わらず、日本ではあまり知られていないのでここで紹介です。

伊藤清(Itoh Kiyoshi)

■功績
・確率微分方程式の祖です。
 (微分方程式に確率概念を持ち込んで、確率微分方程式という分野を
  世界で始めて構築されました)
 第2次世界大戦中に、
 「Markoff過程ヲ定メル微分方程式
  全国誌上数学談話会誌, 244(1942) No.1077, 1352-1400
 に微分方程式に確率過程を導入したのが始まり。
 これはガリ版刷りだったというエピソードが伝わっています。

■出身など
・1915.9.7生まれ
・出身地 三重県北勢町
・住所 〒606-8167 京都府京都市左京区一乗寺樋ノ口町17
・京大名誉教授、日本学士院会員
・理学博士
・仏学士院科学アカデミー、米科学アカデミー各外国人会員

■経歴
・1938年:東京帝国大学理学部数学科卒
・1939〜1943年:内閣統計局
・1943〜1952年:名古屋帝国大学理学部助教
・1945年:博士号取得 東京帝国大学
・1952〜1972年:京都大学理学部教授
・1954〜56年:プリンストン高等研究所 研究員・1966〜69年:オールフス大学 教授
・1969〜75年:コーネル大学 教授
・1976〜1979年:京都大学数理解析研究所
・1979〜85年:学習院大学 教授
・1979年:退官、京大名誉教授となり現在に至る

■著書は
・「確率論」(岩波基礎数学選書)
 初版は1953年3月ですが、岩波書店より最近再版
・1965年 Diffusion Processes and Their Sample Paths,
   Grundlehren der Math. Wiss. 125 (with H. P. McKean, Jr.) Springer-Verlag
  コーネル大学で書いた本らしい

■論文・1942年 On stochastic processes (1) (infinitely divisible laws of probability)
  Japanese Journal of Mathematics 18
・1951年 On a formula concerning stochastic differentials,
  Nagoya Mathematical Journal 3
・1951年 On stochastic differential equations,
  Memoirs of the American Mathematical Society 4
・1987年 Kiyosi Ito, Selected Papers (D. W. Stroock and S. R. S. Varadhan, eds.)
   Springer-Verlag

■受賞歴
・1978:朝日賞
・1978:日本学士院賞、恩賜賞
・1985:藤原賞
・1987:国際ヴォルフ賞受賞
・1987:勲二等瑞宝章
・1991:日本学士院会員
・1998:稲盛財団第十四回京都賞基礎科学部門を受賞
 (1998/11/11に国立京都国際会館で「確率論と歩いて六十年」というテーマで記念講演、
  実際は、体調不良で息子さんが文面を読み上げられたらしい、
  →この講演が、数学セミナー1999年4月号p2〜p9「確率論と歩いた60年」に寄稿されている)
・受賞ではありませんが、フィールズ賞選考委員も経験

■最近のできごと
・1998年放映のNHK「マネー革命」にも出演(放映では5分程度出演)
 編集前のインタビュービデオ2時間分があったらしく、京大で上映会があったようです